サルダラ – サルデーニャ島の聖なる井戸と温泉のある町

サルデーニャ島聖なる井戸と教会 サルダラ Sardara Sant'Anastasia サルデーニャ島の遺跡、教会、祭り

サルデーニャを縦断する国道131号を走っていると、土の色が急に赤くなる場所がある。サルダラだ。サルダラは、町から5キロメートルほど離れたところにある、サルデーニャ島の温泉地として有名なのだが、Touring Club Italianoによってオレンジフラッグに認定されている町らしく、サルダラの町の中も一見の価値がある。

サルダラ サルデーニャ島
家々には大きな門がある

町の中の家々は、この地方独特の大きな木の門を持つ高い壁で囲まれており、昔はこの大きな門の上のアーキトレーブには職業を示す表象が刻まれていたという。

サンタ・アナスタシア考古学エリア Sardara

そのそれぞれ少しずつ違う大きな門を眺めながら小さな町を散策して、サンタ・アナスタシア教会へ向かう。なんと、この町の中心に、紀元前13世紀から紀元前12世紀の聖なる井戸があり、その聖なる井戸にくっつくように、紀元500年頃に起源を持つサルデーニャ島内でも最も古い教会のひとつであるサンタ・アナスタシア教会がある。さらにヌラーゲ時代のカパンナも発掘され、住宅地に密接している考古学エリアがある小さな町なのだ。町の居住地の中に聖なる井戸があるのは、サルダラとサルデーニャ島北部の小さな町、ぺルフガスのみ。現在のサルダラの町の家々は、ヌラーゲ時代の居住地の上に建てられているため、発掘できない3000年以上前の遺跡が家々の下に潜んでいるという。

サルダラ 聖なる井戸 サルデーニャ島
12段の階段を降りて聖なる井戸内部に入ることができる

サルダラの聖なる井戸は、サンタ・クリスティーナの聖なる井戸のように、四角くまっすぐに切られていない石でつくられている。おそらくサンタ・クリスティーナの聖なる井戸より古い時代の紀元前13世紀から紀元前12世紀頃につくられたと推測されている。

サルデーニャの聖なる井戸とは、水に対する信仰からきていると考えられている。先史時代には、聖なる井戸の水は、病を治す奇跡を行う力を持つと考えられていた。清めのためはもとより、さらには、罪があるかを見極めるために用いられたりもした。天文的な時期と関連があったりもする井戸もある。(そして、後の時代にキリスト教が普及すると、水は洗礼や祝福に用いられるようになる。すべての教会には、アクアサンタや洗礼盤がある。)

洗礼盤 サンタアナスタシア教会
サンタ・アナスタシア教会の1585年の洗礼盤

水による神判を行っていたという説には、盗み、とくに家畜窃盗の疑いのある者が、聖なる水の中で目を開けて、目が見えなくなったら罪があるしるし、視力が良くなったら無罪であると考えられていた。

12段の階段を降りて、井戸の水を見ることができる。12段の階段を降りて水の湧き出ているところから上を見上げると、ヌラーゲと同じくトロス thòlos 状に石が積み上げられていることがわかる。

thòlos トロス 
聖なる井戸の下から上を見上げる

1913年の発掘調査でこの聖なる井戸が発見されたときは、この井戸はサンタ・アナスタシア教会内部にあった。聖なる井戸へのアクセスを可能にするために、教会のファサードは数メートル後ろにずらされた。
そして、その発掘調査の時に、この教会のファサードにはヌラーゲ時代の建築物に使われていた資材を再利用されていることがわかったそうだ。

サンタ・アナスタシア教会 サルダラ
サンタ・アナスタシア教会

サンタ・アナスタシア教会
起源は500年頃のビザンティン時代にさかのぼる、サルデーニャ島内でも古い教会のひとつ。現在みられるのは15世紀に再建されたのもの。教会内部にはヌラーゲ時代の井戸がある。この井戸は、ふつうに使う水のためと考えられている。もともとは、会議のためのカパンナの脇ににあった。珍しい2身廊の教会。

サルダラ サンタアナスタシア教会 chiesa Sant'Anastasia
珍しい2身廊の教会。写真左のライトアップされているのがヌラーゲ時代の井戸

サルダラの温泉
サルダラの町から5kmほどのところに、サンタ・マリア・デッレ・アクエと呼ばれる地区がある。サルダラの温泉の源泉があり、近くには、二つの小さなヌラーゲがある。ヌラーゲのひとつは、なんと温泉ホテルの敷地内にある。どちらも塔がひとつのみのヌラーゲで、ほぼ草木や地中に埋まり、残念ながらきちんと見ることはできないが、3500年前のヌラーゲ時代にサルデーニャの人々が温泉の湧き出る場所の近くにヌラーゲをつくり、治癒効果のある温泉を利用してきたというのは興味深い。
紀元前200年頃のローマ時代になるとこの温泉は フェニキア人の町、Neapolis に近いことから、Aquae Neapolitanae とよばれるようになり、サルデーニャ島の温泉地として重要な地となった。重炭酸塩の含まれている温泉はイタリアでは稀で、ヨーロッパではフランスのヴィシー温泉の成分と似ている。1800年代の半ばにガエターノ・チーマによって、紀元前2世紀頃のローマ時代のテルメ跡にサルデーニャ島で初めての温泉施設が建てられた。

La chiesa di Santa Maria delle Acque サルダラ
水の聖母教会

そのローマ時代のテルメの前には、その名も「水の聖母教会」 Madonna delle acque (サルデーニャの方言では Santa Maria de is acquas)という教会が建っている。幾度となく修復と改築を繰り返したこの教会のはっきりとした年代はわかっていないが、1100年から1200年頃に起源をもつと推測されている。また、サルデーニャ島にキリスト教が伝わってきた時代(ビザンティン時代)の建物の跡に建てられたと考えられている。
毎年9月にはこの教会で祭りが行われる。キリスト教の祭りではあるが、起源はキリスト教以前のローマ時代やヌラーゲ時代の水に対する信仰に遡るとされている。

現在、ローマ時代のテルメ近くには、温泉ホテルが2軒あり、デイスパや宿泊ができる。イタリアの温泉は水着を着て入る。スイミングキャップ着用のところも多い。温泉プールというかんじで、お湯の温度はあまり高くなくぬるめ。

サルダラテルメ温泉 
イタリアの温泉は水着を着て入る
error:
タイトルとURLをコピーしました