昨日、ポルト・チェルヴォのステラ・マリス教会の司祭、ドン・ライモンドが亡くなった。27年間、ポルト・チェルヴォの司祭だった、ドン・ライモンド神父は夏には、コスタ・ズメラルダに別荘を持つ億万長者もステラ・マリス教会でのミサへ訪れるため、VIPの司祭とも言われることもあったが、誰をも魅了する、宗教を超えたすべての人の司祭であったと思う。貧しい区域で教区司祭をするのも大変だと思うが、極端なお金持ちの地域の教区司祭をするのも、また、特別な才能が必要であると思う。
私がライモンド神父に会ったのは、初めてステラ・マリス教会を訪れた時だった。教会には誰もおらず、なぜかたまたま、ライモンド神父だけがいらして、小さな教会について案内というか説明をしてくださった。誰をも魅了する笑顔、明るい口調と抑揚のある声のトーン。ちょっと話しただけなのに、すっかりライモンド神父の魅力に打ち負かされてしまった。この司祭のミサならば参加して、是非話を聞いてみたいと思った。そして、なぜか、結婚式を挙げたかったら、ここでやりなさい。僕に任せて!と言われたのが、びっくりしたため今でも印象に残っている。誰とも結婚する予定もなかったし、しかも、カトリック教徒でもない私に、なぜそんなことを言ってくださったのか、今でも不思議に思う。時折、有名人が結婚式を挙げるような有名な教会なので、この教会で結婚式をするためには2年待ちと聞いたこともある。また、他の教区の信者でも、ドン・ライモンド神父に式を挙げてもらいたいという人も少なからずいたようだ。
ステラ・マリス教会は、コスタ・ズメラルダを創設したアガ・カーン4世の希望によって、建築家、ミケーレ・ブジリ・ヴィッチによって建てられた教会。ポルト・チェルヴォのマリーナを見下ろす、波のような形をした角のない真っ白な教会は、ポルト・チェルヴォのシンボルのひとつでもある。細部の一つ一つが可愛らしく、中に入ると、内部に使われているジネプロの香りがして心が癒される空間だ。花崗岩の柱、ピヌッチョ・ショーラの彫刻、ルチアーノ・ミングッチの扉、エル・グレコの絵画、ジュリアーノ・ヴァンジの聖書台。でも、やはり、ドン・ライモンド神父の人を惹きつける存在が、ステラ・マリス教会の重要な一部分だったと思う。62才、まだまだ、多くの人々の灯台となりえたと考えると残念な気持ちでいっぱいですが、ご冥福をお祈りいたします。